こだわりのいっぴん
私は古い鉋を集めており、地元の上手な鉋職人さんに仕上げ直しをして頂いて「仕上げ直しの鉋」のページで販売しています。
先月の始め頃のことです。
当社が特別に青紙付で製作して頂いている小刀職人さんの坂井久二(ひさじ)さんに、前から企画していた新しい製品をお願いするためお訪ねしました。
その時、雑談の中で、現在75歳で後5年は仕事をしたいと思っているが、ポリープが見付かり10/28に医者へ行くことになっていること、鉋鍛冶の父から独立した時に石田金物さんから3か月分の注文をもらい、お金を貰って練習をさせていただいたようなものだったなどの話をされました。私が帰ろうとしたら外に見送りに出て来られて、立ち話した中で、石田金物さんのお祖父さんが亡くなられた時、弔辞を言われたのが外栄さん、貴方のお父さんだったですねとか、自分のお父さんが鉋鍛冶で、その跡は兄さんが継がれて、自分が小刀鍛冶として分家して独立したなどの話をされました。
私がお父さんの鉋の銘を聞いたところ、表題の銘だと言われ、初代初弘の一番弟子で、金井芳蔵さんの兄弟子でした、と言われます。これは初めて聞く話でしたので驚いたのですが、佐藤巳弥治さんに聞いて頂くと解ります、とも言われまして、それで私の切出しにも同名を打っているんです、とのことでした。(当社は青紙を使って、当社マークの「大納言」を打って頂いています)
なお、坂井さんの大納言の切出しはこちらからご覧になれます。
(その後、青紙が無くなって白紙で製造して頂いていましたが、大変残念ですが、22年始めに突然にお亡くなりになりました。以後は甥に当たる方から製造して頂いています)
ここまでは話をお聞きしただけだったのですが、その後のことです。
仕入れた錆鉋を研ぎ直してもらった中の1枚、真っ赤に錆びた鉋で・・・、錆取りは私の仕事なものですから・・・、手入れしていた時のことです。
この鉋は造り込みから三条鉋だと思いつつ手入れをしていました。
銘は拳骨なのですが、どうやら拳骨の二の腕の当たりに銘があるようなんです。そこの錆を取っていたら、なんと拳骨の真ん中に表題の銘が出て来たのです。
まさか、これが坂井さんのお父さんの鉋ではないだろうと思いつつ、いくらかの期待を持って、再度、新しい企画のことでお訪ねした時に見て頂いたのです。
一見するなり、「これは親父の鉋です。よっぽど古い鉋ですよ。戦前くらいのものではないでしょうか。」と言われます。
この腕は、腕が立つとか、腕がよいという意味で使ったものです、とのことでした。
お父さんのお名前を聞いた所、鞆治(ともじ)ですとのこと、更に、よく見たら左下に友治とあります。(19/11/21記)
もし、約一ヶ月前に坂井さんを訪問していなければ、1枚の錆鉋として処分したはづでしたので、これこそ、ご縁だと感じている次第です。
ここで、その珍品をご紹介します。
なお、「仕上げ直しの鉋」のページは次でご覧戴けます。こちらからお入り下さい。
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