こだわりのいっぴん

玉鋼岩崎印日本剃刀


岩崎航介さんが日本刀の技術を使って、玉鋼の剃刀を製造されたことはあまりにも有名な話です。

岩崎さんの剃刀には、玉鋼○三岩崎の刻印があるのが普通ですが、この品は○三がなく、単に「玉鋼 岩崎」の銘です。
中古品でしたので岩崎さんから観て頂いて、更に再研磨して頂きましたのでご紹介します。

左が中古品で、右がそれを研磨した後の写真です。


次は三条鍛冶道場の展示品を拡大表示したものです。


次は研後と三条鍛冶道場の展示品を並べて表示しました。


岩崎航介さんは日本刀の研究から入られて、やがて刀鍛冶の技術を使って玉鋼のレザーの製造しておられました。
昭和30年代後半になって、日本剃刀も造って欲しいとの要望が出て来たそうです。

処が、レザーと日本剃刀は製法が違うことから、取敢えず、兵庫県小野市の日本剃刀の専門職である宮本操さんに協力して頂いて製品化されたそうです。
玉鋼を鍛造したものを宮本さんに送って加工して頂き、更に送り返してもらって焼き入れし、再度送って最後仕上げをしてもらって製品にしていたそうです。
この時期に製造した製品が、この刻印の品で○三マークが入らなかったとのことした。

水落さんのお話では、そのために何回も小包で送ったり、届いたりしていたとのことでした。
(水落良平さんは岩崎さんに昭和36年から約10年間勤務されています)

最後は、宮本さんから三条に約1週間滞在して頂いて指導して頂き、それからは全ての工程を自社で造れるなり、以降の製品には○三の刻印が入るとのことでした。

この時期の同じ刻印の新品が三条鍛冶道場に展示されているとのことでしたので訪ねて撮影させて頂きました。
平成23年1月25日にお伺いし、玄関を入ると直ぐのところにある陳列ケースで現品を確認してから事務所に入ったら飯塚重房さんがおられます。
「貴方のように仕事で忙しい方が何でこんな所にいるんですか?」と言いましたら、「これも私の仕事でして・・・・。」ということで、現在の三条鍛冶道場の館長さんが飯塚さんだったのです。
(実は、飯塚さんの重房の包丁が大変な人気で、当社が発注してある3年前のものがまだ出来て来ないんです)

持参した剃刀をお見せして展示品と一緒に並べて写真を撮らせて頂きたいとお願いして撮らせて頂いたものです。
重房さんが岩崎さんのお弟子さんでしたから、私が持参した品を見て、「これは昭和40年前後のものでしょう。」と言っておられました。

以上のことから、この刻印の剃刀は岩崎さんの歴史的にも貴重な製品ということになります。

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