この一文は三条新聞2012年(平成24年)4月25日(水曜日)号から引用させて頂きました。

伝統工芸士4人 初めて越後三条鍛治集団から

                                  やっとこ製造   小林 由夫さん(73歳)
                                  鉈(なた)製造   日野浦 司さん(55歳)
                                  鑿(のみ)製造   池田 慶郎さん(70歳)
                                  鉞(まさかり)製造 水野  勲さん(69歳)
長い年月経ての伝産指定、伝統的工芸士認定

知識・実技試験経て合格
   肩書きに恥じない仕事誓う

三条商工会議所など誕生祝賀会
伝統的工芸品の指定を受けている「越後三条打刃物」の伝統を守る越後三条鍛冶集団(小林由夫会長)からこのほど、初めて四人の伝統工芸士が誕生。二十三日午後六時から三条市横町一、餞心亭おお乃で伝統工芸士誕生祝賀会を開いた。

 三条の金属加工産業の土台となる基礎技術を継承している伝統鍛冶を全国にアピールし、産地を守り、伝統を継承しようと、平成十五年ころから伝統的工芸品への指定を得ようと三条工業会、三条商工会議所などがさまざまな研究を重ね、何度も大きな壁に突き当たった。

 しかし、平成二十年十月に実際に技術を伝承している鍛冶職人たちによる越後三条一泡集団を指定の受け皿組織として設立。
 経済産業大臣に伝統的工芸品指定を申請し、翌二十一年四月に念願の 「伝統的工芸品」の指定を受けた。

 平成二十二年四月には伝統的明工芸品の振興計画が経済産業大臣の認定を受け、昨年八月から伝統工芸士の募集を開始した。
 ここには和釘づくりの師範でやっとこ製造の越後三条鍛冶一団の小林由夫会長(七三)=西四日町・小田製作所=、鍛冶集団設立発起人で鉈(なた)鍛冶の日野浦司さん(五五)=塚野目・日野浦刃物工房=、「サムライ鍛冶」の異名を取る鑿(のみ)鍛冶の名人・池田慶郎さん(七〇)=荒町・池田鑿製作所=、遺跡発掘物の復元までこなす鍼(まさかり)鍛冶の名人・水野勲さん(六九)=荻堀・水野製作所=の四人が名乗りを 上げ、産地委員会による知識・実技 の試験を経て、昨年十二月十四日に四人そろって合格が発表され、ことし三月に伝産協会から認定証が交付された。


祝賀会には越後三条鍛冶集団の会員や釆賓など五十人ほどが出席、拍手のなか、伝統工芸士四人が入場。
 来賓祝辞で国定勇人市長は、「いま鍛冶集団の活動に対し、伝産指定や伝統工芸士の認定と光が当たっているが、これは神がタイミングよく天から先を考え、ここが踏ん張りどころとして伝統を一次世代につなぐため、さ らなる飛躍をとげようと努力されたことへの正当 な評価だと思う。かつて 世界に誇った刃物産地、 ゾーリングンはいま、見 る影もない。三条はその 轍を踏んではならない。 その思いで一致団結して 果敢に挑戦されてきたあ かし。三条のアイデンティヱイーはものづくりである以上、その基礎技術が最も重要。応用技術は時代とともに廃れるが、基礎技術があればいつでも応用技術は生み出せる。しかし、基礎技術は一度失われたら取り戻せない。そうならないためにも皆さんの頑張りが必要です。行政もことし、同じ刃物産地の越前市、関市とともに日本鍛冶学会を設立したいと動いてます」と話した。

  三条商夭偏所の斎藤弘文会頭は、「エ業会の理事長だった平成十五年に『産地間競争に打ち勝とう』をスローガンに掲げ、三条にはこれだけ金属産業の歴史があるのに伝産指定がないのはおかし、と思って動き出した その過程で指定を受けることが非常に難しいことを知った。その後、高橋一夫市長、渡辺勝利会頭の時代から会議所が市の補助をいただいて伝産指定を研究してきたが、それが平成二十一年にようやく実った。私の会頭としての一番の仕事は、三条の産業を全国津々浦々にPRし、浸透させること。毎月の全国会頭会議でも、鍛冶の話をずると一発で三条を認識してもらえるようになってきた。今後も鍛冶文化の発展に会議所も精いっぱいの支援」を約束した。

 伝産指定、伝統工芸士認定に大きな役割を果たした元東京農業大学客員教授で民俗学者の香月節子さん=東京都=は、「全国の鍛冶文化を研究し、三条に人つたのは十五年前。そのとき、『もつと早くこの産地を知らなくてはいけなかったのだ』と気づかされた。いろいろな産地を見てきたが、三条には得体の知れない強さを感じた。鍛冶集団の皆さんと会い、会議所の中川(恵一郎)課長とともに伝産指定のために職人さん一人ひとりと交わり、エネルギーをいただいてきた。この産地はほかとはひと味もふた味も違い、しかも行政とのかかわりもほかには見られない。今後も『越後三条鍛冶』の世界を皆さんから浴びるほど聞かせていただき、記録にまとめたい」とした。


 国定市長から伝統工芸士の認定証と盾、バッジを受け取った四人はステージに並び、代表して小林会長が、「鍛冶からの初の伝統工芸士誕生の祝いに興奮しています。長い年月がかかった伝産指定、そしてエ芸士の認定。その先達となれた喜びとともに、あとに続く人たちの育成に取り組みこい。きょうは新しい出発の日。多くの関係者の皆さんのお力に感謝します。私たち四人は現役の職人。偉大な肩書に恥じない仕事に努めます」と喜びを話し、会場から四人に大きな拍手が贈られた。
祝賀会はこのあと、三条工業会の兼古耕一理事長の音頭で乾杯し、祝賀会に移った。



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