三条新聞20141/15から引用

式年遷宮の和釘、野鉄金物も製造
10年前から『たたら製鉄』に取組む、玉鋼取り出しに安定技術

五十嵐川の砂鉄から生み出した玉鋼から『和釘3本組』を打ち出し伊勢神宮に奉納
三条市の若手鍛冶職人グループ チーム玉鋼(山本和臣会長・会員12人)

「たたら製鉄」による和鋼の製鉄と製品づくりに取り組んでいる三条市の若手鍛冶職人グループ、チーム玉鋼=たまはがね=(山本和臣会学会員十二人)は、三条工業会による昨年の式年宮伊勢神宮参拝にメンバーが同行し、内宮で、五十嵐川砂鉄から生み出した玉鋼を鍛えた「和釘三本組」を「内宮」に奉納した。

 チーム玉鋼からは山本会長をはじめ七人が参拝に同行し、うち三人は伊勢神宮の和釘・野鉄金物納入事業でも実際に建築に使われた和釘を製造」納入した若手職人。

 チーム玉鋼は五十嵐川砂鉄を精錬した玉鋼から生み出した九_角で、長さ九寸の「階折(かいおれ)釘」と、五_角で長さ二寸五分の「階折釘」、そして三_角で長さ二寸の「巻頭(まきがしら)釘」の三本一組を打ち上げ、桐箱に納め、箱のふた裏には三条製作所代表で刀匠、鍛冶の研究者として世界にも知られる岩崎重義氏が「奉献祝御遷宮 御和釘 越後国三条 チ−ム玉鋼 平成廿伍年吉日」と書いた。山本会長は二十三日の「内宮」参拝で神職に手渡した。

奉納した和釘3本組み
長さ9寸の階折(かいおれ)釘
長さ2寸5分の階折釘
長さ2寸の巻頭(まきがしら)釘



 チーム玉鋼は昨年七月十三、十四の二日間、三条市元町の三条鍛冶道場で、五十嵐川で採取した砂鉄から精製した玉鋼を精錬し、「奉納和釘」を製作した。

 三条の若手鍛冶職人は十年ほど前から日本古来の製鉄法の「たたら製鉄」に取り組み、近年はコンスタントに状態のいい「玉鋼」を取り出すことに成功している。

 そんななか一昨年夏、その前年に発生した「7・29水害」で上流部から運ばれたと思われる大量の土砂とともに、砂鉄が市街地の五十嵐川河川敷に残っているのを見つけ、会員たちが六ノ町地内の信濃川への流入部に近い五十嵐川右岸河川敷で砂鉄を採取した。

 その砂鉄を使って、一昨年九月の「たたら製鉄」で大きな玉鋼のケラ(塊)二個合わせて約二・五`と、大きな塊にならなかった一`余りのバラの玉鋼を取り出した。

 昨年はそのときに取り出した玉鋼のケラを再度、小型の炉に入れてより純度の高い高密度の固体にする作業を行い、精 錬された玉網を鍛えて角棒にし、伊勢神宮に奉納する和釘を打ち出した。

昨年7月13〜14日鍛冶道場で奉納和釘を製作
1キロ金りの車鋼取り出す玉鋼を鍛えて角棒に

 玉網は日本で産出する砂鉄を木炭とともに炉で千四百度余りまで上げて溶解させ、高純度の炭素鋼を取り出す製鉄技術で、現在の科学でも、なぜ鋼が造り出せるのか詳しいメカニズムが解明されていない伝統の技術。

 取り出された玉網は鉄と炭素しか含まない「純炭素鋼」で、鍛冶の世界では「和鋼」と呼ひ、マンガンなど他の物質を含む「溶鋼」と区別する。

 しかも、今回の玉鋼は五十嵐川で採取した砂鉄を使っており、精錬を指導した東京都八王子市の刀匠、佐藤利美さん(銘・八王子住重利)(六九)は、「一昨年、私が会員と一緒に五士風川に釣りに行き、河川敷を歩いていて砂鉄を見つけた。上流の下田地区の山間部から流れ出たものだと思うが、おそらく数万年前からの砂鉄でしょう。

それを地元でたたらで製鉄、精錬し、鍛錬して地元の若い職人が伝統の和釘に打ち上げる。これこそが本ものの越後の和鋼作品。伊勢に奉納するのにこれほど素晴らレいストーリーはない」と、若い職人に負けない熱さで指導した。

7.29水害で運ばれたのか
五十嵐川(信濃川合流点近い)で砂鉄採取

古来からの伝統技法で
精錬を終えた玉鋼を鍛えるには、炉で真っ赤に熟しながらハンマーでたたき、延ばしては折り返し、再び熱してたたくことを繰り返す。
 その過程で酸化防止剤に粉末のホウ酸をかけたり、表面にワラ灰をかけるが、これらはすべて古来からの伝統技法。
 佐藤さんは「いにしえの人たちが経験で生み出もた技術と知恵の結晶で、これこそ『技術科学』。経験で生み出された技術を後に科学が解明するもので、『科学技術』ではなく、この違いは大きい」と言う。



これこそ本物の越後の和鋼作品
2日目の7月14日奉納和釘打ち上げる 二日目の七月十四日午後三時ころから角棒に延ばした玉鋼で奉納和釘づくりを行い、式年運営の和釘づくりにかかわった若手職人たちが手分けし、真っ赤に熟した玉鋼に鎚を打ちつけ、火花を散らしながら九寸の「階折(かいおれ)釘」と、二寸五分の「階折釘」、二寸の「巻頭(まきがしら)釘」を打ち上げて午後四時過きに作業を終えた。



奉納を終えて山本会長
和釘を打ち上げだ山本会長(四〇)は、伊勢に納めた和釘は市販のSS鋼を使ったが、玉鋼は打った感触がまったく違う。硬さもありつつ粘りもある感じ」と言う。
 同じく和釘製作にかかわった日野浦睦さん(三二)は、「SS鋼よけ打ちやすい。鎚を打ちつけたき『ベタッ』と張りつく感じがある。刃物に使う『白紙』などの溶網とも違う。これは言葉で説明するのは難しい。たたいた人でないと分知らない」と話していた。

 奉納を終えた山本会長は「大役を果たしてほっとしましたし、神宮の荘厳さに触れることもできた。今回は記念に家族も一緒に来て参拝もできた。子どもたちに、私がやっている仕事の一端を感じてもらえたと思う」と話していた。

以上が三条新聞に掲載された記事です。

伊勢神宮と三条鍛冶の関係については、三条市の次のページに詳しく書かれていますのでご覧ください。 こちからお入り下さい。

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